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16話 初恋の予感と、心臓の「ドキドキ」

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-10-01 08:12:26

「ユウヤ様! もうっ!」

 俺は、ミリアが怒っている表情で、怒鳴って早足で階段を降りて転びそうになっている姿が目に入った。慌ててソファーの前にあったテーブルを踏み台にし、ミリアまで跳躍をした。そして、抱きしめると同時にバリアを張りミリアを守る感じで階段を結構な距離を滑り落ちた。『ゴンゴン……ドンっ!!』と鈍い音が屋敷中に響き、周囲のメイドたちが息をのむ。彼女たちの顔は、心配と驚きや驚愕で真っ青になっていた。

 俺たちは、慌ててお互いに心配をし合った。

「ミリア、ケガは無いか? 治癒薬は必要か?」

 俺は、ミリアの体をじっくりと確認した。

「わたしは大丈夫ですわ。どこも、ぶつけていませんわ。ユウヤ様こそ、大丈夫なのですか……!?」

 ミリアは俺の顔を覗き込み、青く透き通った瞳に心配の色を浮かべる。その瞳は、俺の無事を必死に探しているようだった。

「俺は大丈夫だけど……ミリアは本当に大丈夫か?」

「は、はい。どこもケガはしておりません……わたしの不注意で、すみませんでした……」

 ミリアは小さく肩を落とした。その声には、申し訳なさそうな響きがあった。

「あ、俺も……ゴメンな、高そうなテーブルを壊した」

 振り返り、豪華なテーブルを踏み台にした真っ二つに割れて壊れていたテーブルを見ながら話した。その豪華そうなテーブルの破片は、床に散乱していた。

「え? あぁ……うふふ♪ 大丈夫ですわ。買い替えれば済むので……。それよりも……ユウヤ様はホントに大丈夫ですか?」

 ミリアが助けてもらえて嬉しそうに答えて、俺の後ろに回り背中や頭を丁寧に撫でまわすように触り調べられ、その指先が触れるたびにゾクゾクとした感覚が背筋を走る。

「大丈夫だって、くすぐったいって~」

 俺はミリアの手をそっと払った。彼女の指先が触れるたび、ゾクゾクとくすぐったい。

「ですが……階段から、わたしを抱えて落ちたのですよ? まだドキドキ……していますわ……♡」

 ミリアの青く透き通ったキラキラした瞳が、潤んで俺を見つめる。その視線は、まるで熱を帯びた宝石のようで、俺の心臓を直接射抜くようだった。

「そりゃ階段から落ちたばっかりだしドキドキもするんじゃないのか?」

 俺は、ごく自然なことだと答えた。

「いえ……そういうドキドキじゃありませんわ」

 ミリアは、きっぱりと首を横に振った。その仕草には、微かな焦りが見えた。

「ん?」

 俺は、彼女の言葉の意味を測りかねた。

「ユウヤ様に、抱き締められてドキドキ……して、いますわ。何でしょうか……このドキドキ……」

 俺を見て頬を赤くしているミリアが可愛い……初恋ってヤツなのか? 彼女の頬はまるで熟れたリンゴのように真っ赤に染まり、その瞳は期待と困惑で揺れていた。初めて感じるこの胸の高鳴りに、戸惑いながらも幸福感が滲み出ている。

「それよりも、ちゃんと見なければダメですわ。あの衝撃でしたし!」

 ミリアは真剣な顔で、まだ俺の背中を探ろうとする。その手は、俺の背中を心配そうに撫でようとしていたが、触れるたびに彼女自身がドキドキしているのが見て取れた。

「だから、くすぐったいって~!」

 俺は声を上げて笑った。

「そうですよ……スゴイ音でしたよ」

 近くにいたメイドさんも近寄ってきて心配そうに見てくれた。その顔には、心からの案じが浮かんでいた。

「勝手にユウヤ様を触らないで下さい。もぉ!」

 ミリアはメイドの腕を軽く叩いて咎めた。その青く透き通った瞳は、わずかに怒りを帯び、自分の獲物を横取りされた子供のように不機嫌だった。

「あ、失礼しました……心配だったもので……」

 メイドは恐縮して謝った。使用人たちも大騒ぎをしていた、ミリアを止められなかったメイドが怒られていた。あの状態で止めるのは無理だろ。メイドや護衛からお礼を言われた。ミリアの専属の使用人たちがいて、ケガをさせたら父親は激怒するだろうね……メイドたちの顔は緊張で引きつっていた。

「ミリアが早足で階段を降りてきたから、階段を転がり落ちそうになったんだぞ? 危ないから注意しろよなー大ケガをするだろ! まったく……」

 俺は少し呆れたように注意した。その声には、彼女を心配する気持ちが込められていた。

「は、はい……すみませんでした……うぅぅ」

 ミリアは素直に謝った。その肩は、わずかに落ちている。

「階段は早足で下りちゃダメだって教わらなかったのか?」

「はい……気をつけますわ……」

 使用人たちがミリアを注意しているのを呆然と見ていて、それを素直に聞いて謝っているミリアに驚いていた。ミリアに注意を出来る人が今までに居なかったのかな……? まあ、メイドさん達が注意を出来るわけ無いし。教育係とかが教えなかったのか? 彼らの顔には、驚きと、わずかな畏敬の念が浮かんでいた。

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